温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

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 雨あがりの朝、僕は新聞配達をしていた。

 東の空は青空が広がり、朝日がすばらしくきれいな朝だった。

 谷あいの道路を自転車で走っていると、向かい側の山すそに「おー!」と思わず声がでるほど鮮明な虹が浮かんでいた。これまで見てきた虹は遠くの山と空にうっすらとかかる程度だったが、今朝のはクッキリとでていた。これから配達に行く家の前にある畑から立ち上がっている。近くへ行けば上ることが出来そうな虹だ。

 道路から見た虹の位置を確認して、その場所へ行って見た。

 ところが虹は前方五十メートルほどに移動していた。こちらがいくら追いかけても追いつけないのが虹だということが分かった。

「虹に上ってどこへ行くつもりだったんだ」

 数日後、道路から虹の下にいる僕を見たというお兄さんが言った。曲がった青うりのような顔をしているお兄さんだ。

「わしも思わず立ち止まって見たよ、君が虹に上ろうとしているのを。上れると思ったがなー」

 青うり兄さんが言った。

「あのときカメラを持っていたら、いい写真が撮れたのに、まさに『虹に上る少年』だったよ、残念だったな」

 普段は、あいさつしても、ろくに返事をしない青うり兄さんが、今日はいやに饒舌だった。

 

  • この項は本編の「新聞配達」で記述済です。当日は夏でしたが絵は晩秋の景色にしました。

  この家も畑も今は無く、柿の木だけが面影を残しています。