温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

炭焼き小屋

f:id:hidechan3659:20190810145515j:plain



  正月前、祖母に連れられて木炭を買いに隣の山里まで行った。

「ごめんください」

 祖母が入口の引き戸を開けて誘(おとな)ったが返事がない。すると祖母は戸を閉めてから庭の横にある山道を登って行った。

「どこへ行くん」

僕が聞いた。

「この上の炭焼き小屋にいるんやろう」

 勝手知った祖母が先に立って10分ほども上登ったところの炭焼き小屋におじさんがいた。

「今、火を点けたところやから、ちょっと待ってや」

 煙で目をしばたきながら盛んに燃え上がる窯の中を覗き込んで薪をくべていた。すでにゴーゴーと音を立て燃え上がっている。しばらくして完全に燃え広がったのを確認したおじさんが祖母に向き直った。

「いちばん安いのでいいけ」

 祖母の口癖だ。

「下の家にカカアがいるけ」

「さっきは留守やった」

「裏の畑にでも居るんやろ」

 おじさんは、また薪を持って竈にくべた。

「ごくろうさんですね」

 祖母と僕は挨拶して来た道を下って行った。

「これから三日三晩は寝ずに火を焚き続けるんや、炭焼きは大変な仕事やで」

 祖母が教えてくれた。

 本当に三日三晩も寝ないのだろうか、竈の近くに寝る場所はなかったから、夜になると竈の前にムシロでも敷いて寝るんかな、と思った。