温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

村の鍛冶屋

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 しばしも休まず つち打つひびき

 飛び散る火花よ はしる湯玉

 ふいごの風さえ 息をもつがず

 仕事に精出す 村の鍛冶屋  

    文部省唱歌

 

 わが家で使う鎌や鍬などの農機具は隣町の鍛冶屋で買っていた。

 金物屋で買うのが普通であったが、鍛冶屋で買ったものは修理も心安く受けてくれるし、物も良かったからである。

   稲の取入れが終ったある日曜日、冬を越すための雑木を集めることになった。

 ひと冬分の風呂焚きや台所の薪にする雑木だから大量に必要だ。

 祖母は木こり鎌2本を修理してもらうため隣町の鍛冶屋へ持って行った。

 鍛冶屋のおじさんは祖母から受け取った鎌を見て、「ずいぶん使ったのう」と言いながら作業中の鉄を横に置いて、わが家の作業に取り掛かってくれた。

 ニコリともしないが優しさ溢れた年寄りだった。

 鎌の柄を取り外したあと、ゴー、ゴーっとフイゴで風を送って盛んに熾した火と炎の中に 錆び付いた鎌を突っ込んだ。真っ赤になった鎌を取り出し新しい鋼を取り付けて金づちで叩きながら形を整えた。 また火の中に突っ込んで真っ赤に焼けた鎌を水に浸けた。ジャーと大きな音がして水面を湯玉が走った。後はグラインダーと砥石で刃を尖らすだけだ。

「買い物してきますけー」

 祖母は外に出た。

 夕方、鍛冶屋へ行くと、鎌は出来上がっていた。

 刃はピカピカに光り、尖っていた。そのうちの1本は新しい木の柄に替わっている。

 「いくらですか」祖母が修理代金を聞くと、

「ええよ」

 おじさんは代金を受け取らなかった。

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  ふいご(手動送風装置)