温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

戸締り用心

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 6年の夏休み前だった。
「夏休みに入ったら夜回りしょうか」
 いつも3人で遊んでいるY君が言った。
「いいな」
 皆が賛成した。日が暮れれば遊びに出ることのない僕らだが、夏の夜に外を歩けば気持ちいい。
 夜回りなら親も反対しないだろう。
 親は皆が賛成だった。
 夏休みに入った初日の夕方8時に、提灯を持って、マムシ除けのゴム長靴を履き、杖より少し長い竹の杖を持ってスタートした。杖もマムシ除けである。
 隣のM君と合流してやがてY君とI君が合流した。
 僕とM君が同級生でY君は1歳年下、I君はY君の2歳下の兄弟だった。
 I君が拍子木を持っていた。大工のお父さんが樫の木で作ってくれたのだ。
 拍子木を打つとカーンと甲高い大きな音がした。これはI君が持つことになった。
 カーンカーン
「火の用心」
 カーンカーン
「火の用心」
 声を合わせ、できる限りの大声で叫んだ、気持ちいい。
 集落の中を1周しても30分ぐらいで終わった、でも気持ちよかった。
 ある夜、
「戸締り用心と言ったらどうだろう」
 一番年下のI君が言った。
「いいな」
 即座に皆が賛成だ。
 僕には思いもつかなかったI君の発想に驚いた。
「火の用心」
 カンカン
「戸締り用心」
 カンカン
 
 夏休みも終わりに近づいたころ、集落にある店の前を歩いていると、呼び止められた。
「毎日ごくろうさんだね」
 店屋のおばさんが5人にローソクを10本ずつくれた。
「ありがとうございます」
 僕らは大喜びで受け取った。ローソクより僕らの夜回りに好意を持っていてくれたことがうれしかった。
 
 夏休み最後の夜まで続けた。