温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

森の水車

f:id:hidechan3659:20180718110245j:plain

  緑の森のかなたから

陽気な歌が聞こえましょう

あれは水車のまわる音

「コトコトコットン ファミレドシドレミファ

 コトコトコットン コトコトコットン

 仕事にはげみましょう

 コトコトコットン

 コトコトコットン

 いつの日か

 楽しい春がやってくる」

 

 童謡・森の水車

 

 

   水車を見た記憶がある。

 五歳か六歳のとき、祖母と二人で村の外れになる集落から、さらに人が歩くだけの狭い道を水量の多い谷川に沿って入って行った。

 しばらく行くと太い丸太を渡しただけの橋があり、その先の森の中に水車があった。

 祖母は僕の手をとって橋を渡り、水車小屋の前へ出た。

 ザーゴットンゴットンと水車が回っている。開け放たれた戸口から室内を見ると、水車から出た太い丸太(芯棒)が部屋を貫き、その下土間に半分地に埋まった二つの石臼があった。その上に縦に取り付けられた丸太(杵)が芯棒の回転に合わせてグーッと上がり、ゴットンと石臼の中に落ちた。石臼には米が入っていた。

 初めて見る水車小屋を興味津々で見つめる僕を祖母は立ち止まって待っていた。

 記憶はここまでだった。

 こんな山奥に何の用事で来たのか忘れている。おそらくこの奥にある民家へ木炭を買いにきたのだろうと思うが、そのあたりの記憶がない。

 ただ、もう一つ。断片的に残っているのは、水車小屋からさらに歩いて行った道はそのまま民家の庭になり、縁側の前を通って玄関へ行ったこと、縁側は枯れた竹の葉の吹き溜まりになっていたこと、家は孟宗竹林の中にあり、放し飼いのニワトリが竹林の中にいたことである。

 この家を

「スズメのお宿」だと僕は思った。