温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

ヤキメシと茶わん蒸し

 高校でバスケット部に入っている長兄が遠征試合から帰った数日後、

「松江で焼き飯を食べたらうまかった」と初めて食べたヤキメシなるものをわが家でも作ってみることにした。

「何が入っていたか」

「玉ネギ、ニンジンにハムはあったな」

 長兄は具材を思い出している。

 ハムは食べたことがないし値段も高いのでソーセージを買ってきた。

 母と長兄が台所で相談しながらフライパンいっぱいに作ったヤキメシは、母のアイデアで入れたネギが多いため緑色の目立つものだったが、出来栄えは上々だった。

「初めてにしては上手くできたな」 

 母と長兄も満足そうに食べていた。

 以後、わが家のメニューに組み込まれた。

 

 またある日、長兄は松江の旅館で食べた茶碗蒸しの話をした。作り方を女中さんに聞いてきたらしい。

「卵なら沢山あるよな」

 ニワトリを飼っているから卵はある。

 長兄と台所に立った母は、かまどに火を熾し、水を入れた羽釜の上にセイロ(蒸籠)を載せた。

「器はないから、これにするか」

 と言って瀬戸物の汁茶碗を出し、長兄に聞きながら細かく切った具材と卵の溶いたのを入れた。

 セイロから出る湯気が天井まで上がっている。

「もういいだろう」

 母がセイロを下した。

 初めてにしては上手くできた。

「うん、この味だ」

 長兄も満足している。

「本物はイチョウの実が入っていたで」

 長兄が細かく切ったカマボコを箸でつまみながら言った。

 ギンナンなら秋に取っておけばいくらでもある。と思いながら僕も食べた。

なんでこんな簡単にできるのに今まで作らなかったのかなと思ったが、外食することのほとんどない母は茶碗蒸しを知らなかったのだ。