温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

案山子(かかし)

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山田の中の1本足のかかし

天気も良いのに蓑かささして

朝から晩までただ立ちどおし

歩けないのか山田のかかし

     童謡・かかし

 

 秋になり稲穂が頭(こうべ)をたれるころになると、田んぼにスズメが群がる。
せっかく実(みの)った米をスズメに食べられてはたまらない。
村の人たちは、スズメを寄せ付けないため、きらきら光るテープを張ったり、案山子を立てたりした。
 母も、毎年、案山子を作っていた。だが、家族の誰にも見せようとはしなかった。いつの間にか納屋の中で作って完成すると黙って担いで田んぼへ持っていった。
ぼくなら「どうだ、上手いだろう」と自慢するのに、母は、いつの間にか田んぼに立てていた。
 案山子といえば「へのへのもへじ」と書いて顔を描くのが、あたりまえのようになっていたが、母は黒のペンキで眉毛、目、鼻、口をくっきりと描いた。
大きな目がぎょろりと睨みをきかしている。
「うまくできているねー」
 隣の田んぼで農作業をしていたおばさんが感心している。
 母は照れくさそうに、ちょっとだけ顔を赤くして黙っていた。
 母の作った案山子は周辺のものとは出来栄えに格段の差があった。
だが、スズメを追い払う効果があったかどうかは、はなはだ疑問だった。
案山子の頭はカラスの休憩場所になっているのをぼくは知っている。