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温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

籾摺り(もみすり)

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      絵・籾摺り機(もみすりき)による作業

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    絵・発動機(燃料は重油)

 毎年、12月23日か24日のいずれか天気のいい日、秋に脱穀した籾から玄米を取り出す作業(籾摺り)をした。これは機械がいるので、近所のおじさんに依頼していた。
 朝早く、おじさんは籾摺機と発動機を我が家の庭に据え付けた。
 籾摺機と発動機との間は2メートルほども空(あ)けてある。両方の機械はベルトでつなぐのだ。
祖母と母は籾の入った叺(カマス)を、納屋から搬出して籾摺機近くに積み上げている。カマスとは二つ折りにしたムシロの両サイドを縄で編んで袋にしたもので、2袋で米俵1つ分の籾を入れてあった。 おじさんが発動機のはずみ車についている取っ手をもって、いきおいよく回転させた。
「シュッシュッシュッ、ストンストン」と回りかけた発動機が、「スー」という音を残して止まった、失敗だ。普段は目にすることのない青白い煙が、ぼっとひとかたまりになって発動機の上に浮いたが、やがて少しずつ薄れていった。2回目も失敗だ。燃料の重油が燃焼する香ばしい匂いが漂ってきた。
 3回目、おじさんが一呼吸置いた後、力をこめてはずみ車を回転させた。「シュッシュッシュッ、ドッドッドードドドドー」勢いよく動き始めた。
「よし、動いた」
 巾(はば)が10センチほどもあるベルトを、回転している発動機に取り付ると、動力を得た籾摺機が勢いよく動いた。ベルトが中間(ちゅうかん)で八の字に交差している、こうしておくと回転中のベルトが外れないということだ。
 おじさんが籾を投入した。これまでの「ゴー」という音が「ザー」という音に代わり、機械の横から玄米が出てきた。
 1斗缶(かん)ほどの大きさしかない小さな発動機は、大きな籾摺機を軽快に動かしている。
 放出された籾殻が籾摺機の前方で山になっていく。
「いい米だ」
 おじさんがひとにぎりの玄米を、手のひらに載せて祖母に渡した。
「うん、いい米だ」
 口に入れて、こりこりと噛みしめる祖母も満足そうだ。
 母ができあがったばかりの玄米を一斗袋(米約14キログラム入りの布袋)に詰めて精米所へ持っていった。
「今晩のご飯から新米だ」
 晩御飯が楽しみだ、心がおどった。

 数年後、発動機はジーゼル発動機に替わっていた。横についているボタンを押すと、「ドドドドー」と軽快な音を発して始動した。大きさもひとまわり小さくなっていた。

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     絵・唐箕(とうみ)