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温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

蚤(ノミ)

「ガーガー」といびきをかいて寝ていた祖母が、突然布団の中から起き上がった。
「蚤(ノミ)がいる、獲ってくれ」
 おもむろに腰巻をとってぱっと広げた。
 ぼくがじっと見つめる。暗い腰巻の下でのんびりと人間の血を吸っていた蚤は、突然明るい電灯に照らし出されて泡を食ったように飛び跳ねながら暗がりへ逃げようとする。
 蚤にとってはそれが命取りになるのだ。動かずにじっとしていれば見つからないものを、動いたばかりに、姿をさらすことになるのだ。
すばやく捕まえて両手の親指と親指の爪に載せてブチっとつぶした。
 祖母は腰巻を着けて何事もなかったように布団に横たわった。