読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

虱(シラミ)

 太古の時代から人間の体に寄生して血を吸い、病原菌を媒介するいまわしいやつ、それが虱(シラミ)だった。
 虱は髪の毛や衣服などに卵を産み付ける。あっというまに「黒い髪の毛が白く見えた」というほど群れて取り付く。噛まれたら痒(かゆ)いので、手でぼりぼりと掻く、ひどいときには髪の毛が抜けるほど掻いてしまうこともあったという。
 黒い軍服が霜降りのように白くなっているので脱いで叩(はた)くと、ばらばらと白いものが落ちた。よく見ると虱だった。という、身の毛のよだつおぞましい光景が昭和20年代まであった。
 ぼくが小学校に入学して間のないある日、5、6年生の女の子が髪に殺虫剤の粉末を吹きかけられて真っ白な頭をしているのを見た。虱退治のためだった。
 殺虫剤はDDT(ディディティ)だった。現在では人間の体内に残留して害をなす農薬としてDDTやBHC(ビイエッチシー)は、肌に直接触れることを禁止されている。当時は人間に害のない農薬として肌に直接噴霧していたし、素手で取り扱っていた。
 虱の成虫は殺虫剤をしつこくかければ駆除することができた。だが、卵には効き目がなかったので衣服についた卵を駆除するため30分以上熱湯で煮沸しなければならなかった。それでも、直ぐに新たな虱が取り付いてしまったという。
 衣服の縫い目に沿って一列にびっしりと潜んでいる虱とその卵を、一つずつ潰していくのが一番確実な駆除方法だった。これが「しらみつぶし(物事を残らず片はしから処理していく)」の所以(ゆえん)だという。
 幸いにも、ぼくが生まれたときには我が家に虱はいなかった。
 小学校で女子の髪の毛に付いている白い虱の卵を数回見た程度だった。