温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

砂糖

「こんばんは」
 玄関から小さな声がした。近所のおばさんのようだ。応対している母もひそひそと小さな声で話をしている。
 おばさんはそそくさと帰って行った。
「なんの用だ」
 なにも聞えなかった祖母が不服そうに聞いた。
「○○さんが村会議員選挙に出るんだって」
 あいかわらず小さな声で話しながら、さきほど受け取った3斤(きん)(1斤は600グラム)詰めの箱入り砂糖を置いた。砂糖は高価で貴重だ。
 投票依頼の手土産として村中に配ったらしい。
 当時としても、明らかな選挙違反なのだが「投票依頼に砂糖3斤」は当然のように行なわれていた。
 翌日、ぼくの家では砂糖のたっぷり入った「ぜんざい」に舌鼓(したつづみ)を打った。

 ○○さんは落選した。
 選挙違反で警察に捕まった候補者はいなかった。