温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

怪談

 昭和35年ごろだった。浜田の近くで夜になると山から木魚の音が聞こえるということがあった。
 日が暮れると山の上の方からポクポクと聞こえてくるという。
 その山は戦国時代の合戦で潰れた城跡だと言われている。
「キツネやタヌキのいたずらならホラガイの音を嫌がる」
 と言って山伏がホラガイを鳴らしたがまったく効果がなかった。
 昼にその山に登ってみてもなんら異常は認められないという。
 噂が大きくなり、警察で山狩りを行ったが何もつかめなかった。
 山のふもとに尼寺があり、そこの尼さんの回向も無視して木魚は相変わらずポクポクと聞こえていた。
 
 新聞で大きく報道されてから毎晩のように人が集まり、夜店まで並ぶしまつで、お祭りのようになってしまった。
 そのうち、あまりの賑やかさに嫌気がさしたのかどうか、木魚の音は聞こえなくなった。