高校2年の秋だから昭和36年(1961)のことだった。
「きのう、学校からの帰りがディーゼル機関車だったよ」
機械科のK君が言った。ぼくはまだ蒸気機関車しか見たことない。
「SLより速いか」
「速度は変わらんと思うよ、でも力は強いな、浅利の上り坂でも速度は落ちなかったからな。それより窓をいっぱい開け放してトンネルを通過しても煤煙が入って来ないから気持ちいいよ」
部活のためぼくより1本後の汽車に乗ったらディーゼルだったのだ。
「ディーゼルといってもディーゼルで駆動しているのではなく、ディーゼルで発電した電気で駆動輪のモーターを動かしているらしい」
機械科専攻のK君がディーゼル機関車の動力機構を説明した。
「モーターで動かしているんか」
回りくどいことをしているなと思った。
「じゃー電車かな」
「やっぱり、気動車というべきかな」
それからまもなくディーゼル機関車にけん引された列車に乗った。
「ピー」
聞きなれない汽笛とともに動きだし、ぐんぐん加速していった。