温泉津町福光・遥かなる故郷

僕の少年時代(昭和20年から30年代)の思い出

戸締り用心

6年の夏休み前だった。「夏休みに入ったら夜回りしょうか」 いつも3人で遊んでいるY君が言った。「いいな」 皆が賛成した。日が暮れれば遊びに出ることのない僕らだが、夏の夜に外を歩けば気持ちいい。 夜回りなら親も反対しないだろう。 親は皆が賛成だ…

涼み台

150坪ほどのわが家の屋敷内には、母屋と納屋の間に5本のミカンの木があった。いずれも幹の太さが直径で20センチほどもある古木で、ハッサク、夏ミカン、ネーブル、ダイダイと違う種類だった。 夏休みには、南側のミカンの木2本を利用して涼み台を造っ…

新聞紙

「駅前の豆腐屋へ行って油揚げを買ってきて」 村祭りの前日、祖母から言われた。 「よっしゃ」 僕は元気よく自転車を走らせた。店までは自転車で15分ほどかかる。 走りながら『油揚げを買うのになんで豆腐屋?』と疑問がわいた。でもいいや祭りには親戚の…

渡し船

県境近くの山村に叔母の家があった。僕の家からは汽車で3時間とバスで1時間かかったが、2歳年下の従兄がいたので春休みにはよく遊びに行き、夏休みは海水浴が目的で従兄が僕の家へ来ていた。 叔母の家の前に大きな川が流れていた。中国山地から日本海へ流れ…

堆肥撒き

5月、麦刈が終った田んぼに堆肥を撒く作業に取り掛かった。 昨秋に造った堆肥山を三ツ鍬で崩して負い籠で田んぼまで運ばなければならない。 鍬を堆肥山に打ち込み、グッと引上げて負い籠に入れていった。湯気があがり暖かい空気が漂っている、発酵が進んで…

タヌキとムジナ

タヌキ アナグマ 僕の少年時からタヌキとムジナ、アナグマは同種として分類されていたが、僕は「違う」と反論を持っていた。 ムジナは人に対していたずらは仕掛けても危害を加えない、どちらかというと愛嬌のある獣だと思っていた。 僕が中二の夏休みだった…

堆肥

コメの取入れも終わり一段落ついた晩秋、来年のコメ造りにむけて堆肥を作っていた。 母が納屋に保管しているワラのうち昨年の古いワラを取り出して庭に積み上げた。 柿の木の横に長さ3メートルほどの丸太を立て、木を円心にワラの根元を外にして積み上げて…

船頭さん

♫むらの渡しの 船頭さんは 今年六十のおじいさん 年はとっても お舟をこぐときは 元気いっぱい 櫓(ろ)がしなる ソレ ギッチラギッチラ ギッチラコ♫ 童謡・船頭さん (絵の説明・正面の山頂一帯は石見国都野氏の月出城跡、SLは2018年に廃線になった三江…

村の鍛冶屋

しばしも休まず つち打つひびき 飛び散る火花よ はしる湯玉 ふいごの風さえ 息をもつがず 仕事に精出す 村の鍛冶屋 文部省唱歌 わが家で使う鎌や鍬などの農機具は隣町の鍛冶屋で買っていた。 金物屋で買うのが普通であったが、鍛冶屋で買ったものは修理も心…

叱られて

叱られて 叱られて あの子は町まで お使いに この子は坊やを ねんねしな 夕べさみしい 村はずれ こんときつねが なきゃせぬか 童謡・叱られて

野菊

遠いやまから 吹いて来る 小寒い風に ゆれながら 気高く清く 匂う花 きれいな野菊 うすむらさきよ 唱歌・野菊

蕗のとう

初春に雪を掻き分けて芽を出すふきのとう、天ぷらにするとわずかな苦みと香が口いっぱいに広がる。僕の好物だ。 幼少期、わが家の周りにはふき(蕗)が雑草のごとく群れていた。 だが、ふきのとうについてはまったく見たことも食べたこともなかった。食べる…

木守柿

トロッコ

「ええところ見つけたで」 夏休みのある日、次兄が僕に耳打ちした。次兄が中2で僕が小4のときだった。 「なんや」 「トロッコや、あれは気持ちいいで」 「どこや」 「ちょっと遠いけどな、道路を広げるため、今の道の横の谷を埋めているんや、あすこにある…

四日悲しやダンゴ餅

僕の幼少期、正月三が日は毎食餅の雑煮を食べ、夜は母も一緒に花札やトランプゲームでワイワイと騒いでいた。ほんに楽しい正月だった。 四日の朝、雑煮は小麦粉で餅の形に造ったダンゴであった。食べると粘りがなく全然うまくない、実に味気ない雑煮だった。…

一月一日(いちがついちじつ)

年の初めのためしとて 終わりなき世のめでたさを 松竹たてて門ごとに いおう今日こそ楽しけれ 唱歌・一月一日

お正月

もういくつ寝るとお正月 お正月にはタコあげて コマをまわして遊びましょ 早く来いこいお正月 童謡・お正月 大人になって忘れてしまった「ときめき」である。

初めてのお使い

朝は晴れていたのに午後になって降り出した雨は勢いよく降っている。 「兄ちゃんに傘を持って行って」 仕事をしていた母が納屋からでてきた。 小学校へ行っている長兄と次兄へ傘を届けるのだ。 母は、二人の兄が着古したオーバーコートを僕に着せた。身丈は…

雨降り

雨あめ降れふれ かあさんが じゃのめで おむかえ うれしいな ピチピチジャブジャブ ランランラン 童謡・雨降り (背景は元・温泉津小学校上村分校『現・地域会館』島根県大田市)

家路

遠き山に日は落ちて・・・ 情景とメロディーだけは覚えていたが曲の題名を思い出せないでいた。 メロディーはしっかり覚えているので学校で教わったはずだ、だとすると中学の音楽だろう。と思っていた。 最近、やっと思い出して、ドヴォルザーク作曲の「新世…

幼少期に最も悩まされたのが蚊である。 家に網戸はなく、戸や障子は開放したままであったから、蚊はいつも僕らにまとわりついていた。 僕たちを襲う蚊は、やぶ蚊とイエ蚊らしいのだが、両者とも体長一センチほどもある蚊で、同じように黒に白の縞があり僕に…

定番

小中学校時代、夏休みの宿題でよく描いた絵である。 当時の出来栄えがどのようなものだったかは、現物が残っていないので分からないが、浜辺で遊ぶ幼児、沖合に設置された飛び込み台、水平線上の入道雲と止まっているかのようにゆっくりと航行する船はいつも…

反抗

「今日はクラシック音楽を聴きます」 中学3年の3学期で音楽の時間だった。 先生は壇上の奥にあるテーブルの上から蓄音機を持ち出して蓋を開けた。 箱の横に付いているハンドルを数回まわしてから、箱の奥から伸びているアームの先に付いている、サウンドボ…

夕照(せきしょう)

晩秋

汽車

クヌギ

わが家の裏山は雑木林だったがクヌギの大木が多かった。 クヌギのことをマキの木と呼んでいた、といっても高野マキなどの槇ではなく、風呂焚きや台所で使う薪のことで、燃料として使うと火力が強くて、他の雑木より格段の良さがあった。 クヌギは木炭の材料…

中秋の名月

出た出た月が まあるいまあるい まんまるい 盆のような月が 童謡・月 祖母が月見だんごとサツマイモを縁側に置いて、母はススキを徳利型の白い花瓶に生けた、これがわが家の供え物だ。 わが家ではサツマイモを中秋の名月に合わせて初めて3個だけ収穫し、お…

ワラ(藁)ぶき屋根

「夏涼しくて冬暖かい」と言われているワラぶき屋根の家に生まれて高校卒業まで育ったが、このメリットに気づいたのは離郷した翌年に、瓦屋根の家に建て替えてからだった。 夏の休暇で帰省したとき、昼寝をしようと座敷に枕を出して横になった。 「暑い」 部…

七夕さま

ささのは さらさら のきばにゆれる おほしさま きらきら きんぎん すなご 童謡・七夕さま 幼少期、夜空の星はくっきりと見えていた。 現在、夜空を見上げても一つか二つしか見えない、天の川も北斗七星も、もう数十年見ていない。 7月のはじめに描き始めた…